肉じゃがで解決?!キャラクターを思い通りに動かす方法

前世の記憶をめぐる人間模様や恋愛を描いた漫画で「ぼくの地球を守って」という作品がある。その作者である日渡早紀さんが「ここでこのキャラがこの台詞を言わないと話が先に進まないのに、どうしても言ってくれなかった」と明かしていたことを二十年以上経った今でも強く覚えている。
キャラクターが勝手に動く。
そんな日渡先生のような経験をしたことがある作家は少なくないのではないだろうか。自分の生み出したキャラクターが思い通りに動いてくれず、作者の意志とは関係なくひとり歩きをはじめてしまう。
これは創作の醍醐味かもしれないが、同時に物語崩壊の危機と隣り合わせの状態とも言える。そういったことがないように、キャラクターの暴走を防ぐためには、作者は物語を管理する必要があるとわたしは考える。

肉じゃがを作ろう

今回は、料理の定番中の定番である肉じゃがを例に話を進めていきたい。
料理をしないという人のために簡単に説明すると、まず準備するのは、じゃがいも、にんじん、たまねぎ、肉などの食材。それから、醤油、みりん、酒、砂糖、だし汁といった調味料。それらを鍋に入れてぐつぐつと煮込めば、肉じゃがの完成である。
大雑把にはこんな感じである。「鍋」という「物語の枠組み」に、「エピソード」という「材料」を入れていき、「調味料」である「キャラクター」で味付けをするのだ。材料が多すぎて鍋から溢れてしまってもいけないし、調味料にもちょうどよいバランスがある。

美味しい肉じゃが料理を作ること。それは様々な要素を駆使して面白い物語を紡いでいくことにとてもよく似ていると、わたしは思う。
さて、次の項からは調味料(=キャラクター)について着目していき、今回の主題であるキャラクターの暴走について考えてみよう。

調味料のバランス

料理に使用する調味料の塩梅には、個人差がある。人によって最も美味しいと感じる調味料のバランスは異なっていて、誰もが皆納得する味付けにするのは至難の業だ。濃い味付けが好きな人は醤油を多めに入れるだろうし、甘いのが好きな人は砂糖をたっぷり投入するかもしれない。それはその人の好みなので、自分好みの肉じゃがを作りたい人はそれで問題ないだろう。
しかし、調味料のバランスが故意でいじられたのではなく、事故だったらどうだろうか。醤油を入れる時に手が滑って誤って量を多く入れてしまった。これでは、目指すべき自分好みの肉じゃがの味付けにはならないだろう。

この例えは調味料、すなわちキャラクターの暴走する様子を表しており「自分好みの肉じゃが=思い通りの物語」ということになる。一人のキャラクターを作者が意図的に動かしたのでなく、キャラクターが勝手に動いてしまった場合。そのキャラクターと他のキャラクターとの物語内でのパワーバランスが崩れて、物語全体にまで影響を及ぼすことになるだろう。思った通りにキャラクターを動かせないということは、狙った通りの物語を紡ぐことが出来ないと言ってしまっても過言ではないかもしれない。

計量スプーンのすすめ

ところで、調味料を鍋に追加する際に、あなたは計量スプーンを使っているだろうか?醤油の瓶から直接ダバダバと注ぐようなやり方では、なかなか好みの味には辿り着けないだろう。
確かに目分量は楽だし、計量スプーンを使うのは若干面倒くさいかもしれない。けれど、自分の思い通りの味付けにしたいのであれば計量スプーンを使うべきである。
キャラクターを思い通りに動かしたいのであれば、しっかりとした枠組みを物語に用意するべきである。それでもちょっと調味料を入れすぎたり足りなかったり、不測の事態が自然に起こるのが料理というもの、そして創作というものだ。
キャラクターの動きを出来るだけ作者側で管理すること。計量スプーンを使うように、キャラクターを管理することが物語を破綻させないために作者が出来ることなのではないだろうか。

キャラクターを想う親心

それでは、キャラクターの言動を制限したくない人はどうしたらいいだろうか。キャラクターが勝手に動いていくのをあまり管理したくない人もいるだろう。生まれたキャラクターが意志を持ったかのように動きまわることを作者は、親のような気持ちで見つめ、それが嬉しかったりするものである。
そういう人は、そのままでいいと思う。設定をゆるめにして、自由度が高いままで物語を進めていくのだ。キャラクターに物語をすっかり明け渡してしまうというのも、ひとつの作風となり得るだろう。

こまめな味見で、キャラクターに自由を

しかしそれではキャラクターがいざ暴走しそうだという時、どうしたらいいのだろうか。物語全体のバランスや方向性は作者が決めることだ。
いくらキャラクターが暴走したとしても、そのシーンを採用するかどうかといった最終的な判断は、すべて作者のもの。そういう編集能力も作者には求められるだろう。
自分を強く持てる人、作品に対する信念や方向性を強く持っている人は、キャラクターの動きを制限したりしなくても大丈夫。キャラクターを信頼してそのまま書き続けて欲しい。そういったタイプの人であれば、キャラクターの暴走を楽しむことが出来るはずだ。暴走は、物語の収集がつかなくなるのではなく、物語の可能性が広がったと考えるべきなのかもしれない。

ただ、必ず味見はこまめにして欲しい。物語を進めていきながら、全体のバランスやキャラクターの暴走具合、方向性がズレていないかなど、その都度確認していただきたい。そうすることで、キャラクターの暴走をある程度食い止めることが出来るのではないかと思う。

食べられる範囲で自分好みに味付けをしていこう

肉じゃがの味付けは、あなた次第。好みの味付けにするのか、一般受けするレシピ通りの味付けにするのか。それを選ぶのもまた、作者の仕事だ。
ただ、多くの人に受け入れられる肉じゃがにするためには、食べられる範囲での味付けを試してみて欲しい。
また、肉じゃがは調味料(キャラクター)だけがすべてではない。

どう具材を切るのか(エピソードの切り取り方)、どのくらいの量を作るのか(長編短編など物語の長さ)、煮込む時間(執筆にかける時間)はどのくらいなのかといったことも大いに関係してくる。様々な要素を考慮しながら、ぜひ美味しい肉じゃが料理を作って欲しい。
料理も創作も、愛情次第。あなたの心のこもった温かい肉じゃがが食べられる日を思って、筆を置くことにする。